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第112回 近代的小売と伝統的小売の比率

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皆さん、こんにちは。スパイダーの森辺です。今日は、近代的小売と伝統的小売の比率についてお話をします。このシリーズは、前々回ですかね、先進的なグローバル消費財メーカーのアジア新興国におけるKSF主要要因が何なのかと、大きく分けて3つありますよと。1つ目は中間層を狙うことですよと。2つ目はストア・カバレッジを最大化するための戦略的なチャネル構築が上手ですよというお話をした、この2つ目のストア・カバレッジを最大化するための戦略的なチャネル構築がうまいという中で、伝統小売とは何なのか、近代小売とは何なのか、という話を前回して。今日は、その近代小売と伝統小売の比率、国によって比率が全然違うと、そのことについてちょっとお話をしていきたいと思います。
この比率を知るということは、戦略がすごく大きく変わってくる。近代的な小売の比率が高い国の戦略と低い国の戦略は全くもって違うし、難易度も異なってくると。それを学ぶためにも、今回のこの近代小売と伝統小売の比率を学んでいきましょう。
まず、近代小売、これはもう近代的小売とか長ったらしいので、僕はMTというふうに呼びます。略してMT。伝統小売のほうはTTというふうに呼んでいきましょう。青がMTで、オレンジがTT、という中で、これを見ていただいたら分かるんですけども、小売の近代化が最も進んでいるのは中国ですね。62%ぐらいまで小売の近代化が進んでいて、伝統小売というのは38%、言ってもまだ4割弱ありますよと。そんな中、Eコマースというのが2割以上、中国はもうすでにあるという世界ですけど、特殊な状態ですけど、中国があって。マレーシアとか、タイとか、フィリピン、インドネシア、ベトナムなどのこのASEANを見ていただくと。シンガポールは完全に日本と同じ、近代小売がほぼ100%の市場なので載せていません。そうすると、SMT、シンガポール、マレーシア、タイの先進ASEANは、やっぱり近代小売の比率半分ぐらいまであるんですよね。こういう近代小売の比率が半分ぐらいまである国は、比較的、近代小売だけでも商売が成り立つ。輸出でやっていれば、かなり大きなウエイトの売上を保てるし、現地法人を出したとしても十分プラスに転じることはできる、というのがSMTですよね。
一方で、フィリピンとか、インドネシア、ベトナム。ベトナム、インドネシア、フィリピン、VIPに関しては、ご覧の通り、まだまだ2割弱が近代小売で、8割以上が伝統小売なんですよね。こういう市場は伝統小売を攻略しないと、近代小売だけでは絶対に利益が出ないと。輸出でやっても、近代小売の数に限りがあるので、もう限界があります。インドまで行っちゃうと、わずか2%しか近代小売がない。このパーセンテージなんですけど、これ、売上ベースでございます。売上ベースで2%とか、13%とか、15%とか言っているので、店舗の数ベースで言ったら、もう99.99999%伝統小売なんですよね。ベトナムも99.99999%伝統小売。だって、数で言ったら50万店存在する、ベトナム。インドネシア、300万店存在する。フィリピン、80万店存在する。インド、これ1,000万店以上、もう計測不可能というふうに言われています。なので、店舗の数で言ったら、圧倒的に伝統小売ですよという中で、アジア新興国はこの伝統小売の攻略がやはり大変重要であると。
じゃあ、ここで少し深いお話で、将来、小売が近代化していくんじゃないのかと、MTの比率がどんどん上がっていくんじゃないのかと、答えはイエスです。ただ、問題は、そのタイミングがいつなのかということ。これが20~30年でMT化していくか、日本みたいになるかと言うと絶対にならないと。そういうふうに言われる方の多くは、日本の劇的な小売の近代化を見てきているからそういうふうに言うんですよね。ただ、小売というのは、小売単体では近代化はしないんです。小売が近代化するためには、物流のインフラ、それから、道路のインフラ、電気、水道、ガス、システムもそうですね、あらゆるインフラが近代化して初めて小売も近代化できると。
日本の場合、なぜ急激に小売が近代化したかと言うと、北海道から沖縄まで、道路から、ガス、水道、電気、システム、物流、あらゆるインフラが急激に近代化して、なおかつ、コンビニエンスストアという業態が日本人にマッチした、これが小売の近代化を劇的にスピードを上げたという要因になっているわけですよね。今のASEANを見ていると、物流のインフラにはまだまだ課題があるし、電気、ガス、水道のインフラも地方に行けばまだまだ課題があると。道路に関しても課題があるし、そもそも交通渋滞の課題もクリアしていかないといけないので、まだまだ課題だらけであると。そうすると、20~30年で小売がすべてMT化するなんていうことは考えにくいと。
ただ、一方で、日本の昔と現在と違うのは、インターネットの出現であるということと、あと、シェアドエコノミーでいろんなものがシェアをされる時代になってきたと。例えば、ゴージェットとか、ウーバーもそうですし、そういう、バイクのケータリングサービス、配達サービスみたいなものが出来上がってきて、日本ではヤマトと佐川が物流のインフラをつくってきたのかもしれないですけども、ASEANでは、もしかしたら、そういったウーバー的なビジネスのものがそれをつくっていくかもしれないと。そういうことを考えていくと、もしかしたら、違う発展をする可能性も十分にあり得るので、そこはウォッチをしていかないといけない。
ただ、今現状で言うと、20~30年で伝統小売がなくなって、すべてが近代化するということはまずもってあり得ない、ということを申し上げておきます。従って、小売が近代化してから私たち日本企業、そろそろ出ますねと言って出ても、伝統小売の時代に売れていなかったものを消費者が選択するか、と言うとそうではないので、やはり今のうちから伝統小売の攻略にしっかりと経営資源を割くべきであるということと、あと、ASEANで伝統小売の攻略をした、このノウハウというのは、メコン経済圏でも生きてくるし、インドでも生きてくるし、最後、アフリカでも生きてくるので、決して企業のノウハウとしては無駄にはならないんじゃないかな、というふうに私は思います。
それでは今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。